人生の終わりを意識したとき、多くの人が「最後に伝えたいこと」を考えます。
その手段としてよく知られているのが「遺言書」と「遺書」。
どちらも死後に残された人たちへ思いを伝える文書ですが、実はこの2つには大きな違いがあります。
この記事では、混同しやすい「遺言書」と「遺書」の違いを、事例を交えてわかりやすく解説します。
遺された家族が困らないようにするためにも、正しい知識を身につけておきましょう。
● 遺言書(ゆいごんしょ)
意味:亡くなる人が、自分の死後の財産をどのように分配するかなど、自分の意志を表明するもの
特徴は
- 法的効力がある(民法で定められている形式を守る必要がある)
- 財産分与、相続人以外の方への財産分与、遺贈、認知などができる
- 公正証書遺言・自筆証書遺言・秘密証書遺言など、形式が法律で厳密に定められている
- 相続の場で正式に使われる
● 遺書(いしょ)
意味:死を覚悟した人が、自分の思いを家族や友人に伝えるために書く手紙やメッセージ
特徴は
- 主に気持ちや思いを伝える目的(感謝、謝罪、最後の言葉など)
- 法的効力は基本的にない
- 書き方は自由(形式も内容も制限なし)
● 事例で見る違い
🔹事例1:遺言書のケース
【状況】
田中さん(75歳)は持ち家と預金を持っています。3人の子どもがいますが、長男だけがずっと介護をしてくれていました。田中さんは、「家は長男に、預金は他の2人に分けたい」と考えました。
【行動】
田中さんは、法律に則って遺言書を作成しました(公正証書遺言)。
そこには次のように書かれていました。
「私の所有する東京都○○区の土地建物は、長男・田中太郎に相続させる。
預金は次男・三男に半分ずつ分けること。」
【結果】
田中さんが亡くなった後、この遺言書が効力を持ち、遺言通りに相続が行われました。
★ポイント:遺言書は、財産をどう分けるかを指定でき、法的に強い効力がある。
🔹事例2:遺書のケース
【状況】
佐藤さん(55歳)は病気で余命がわずかでした。子どもや妻に感謝の気持ちを伝えたくて、手紙を書きました。
【手紙の内容(遺書)】
「これまで本当にありがとう。妻の花子には感謝してもしきれません。
家は長男が継いでくれたら嬉しい。預金は皆で仲良く分けてください。」
【結果】
佐藤さんのこの「遺書」は気持ちは伝わりましたが、法的な遺言書ではなかったため、正式な遺産分割協議が必要となり、相続人たちが話し合いで分け方を決めることになりました。
★ ポイント:「遺書」は気持ちは伝わるが、法的効力はない。相続手続きには使えない。
● まとめ
遺言書 | 遺書 | |
主な目的 | 財産分与、相続手続き | 感謝、謝罪、気持ちの伝達など |
法的効力 | あり(形式が整っていれば) | なし |
書き方 | 法律で決められている | 自由 |